2022年度の調剤報酬改定によって、これまで対物中心だった業務が対人中心の業務へ転換することを求められるようになりました。業務の重要度が対物から対人へと移行することになった背景には一体何があったのでしょうか？この記事では、対人業務の効率化や業務強化の方法についてご紹介するので、薬局経営者の方はぜひ参考にしてください。
対物業務と対人業務の違い
対物業務と対人業務の違いについて、薬局におけるそれぞれの特性を見てみましょう。対物業務は、物を中心にした業務であり、薬局においては薬剤を中心に据えます。処方箋の調剤や薬剤の管理などがこれに該当します。
一方、対人業務は顧客や患者に焦点を当てた業務です。薬局においては、患者とのコミュニケーションが重要視されます。具体的には、服薬指導やフォローアップ、接客や薬の配達などが含まれているのです。
薬局における影響
2022年度の調剤報酬改定では、この対人業務の重要性が強調されました。これは、従来の薬剤中心の業務から、患者中心のアプローチへの転換を意味します。
従来、薬剤師の役割は薬の調剤や管理に限定されていると思われがちでしたが、実際には患者へのケアやサポートも不可欠です。薬剤師は、患者の症状やニーズに寄り添い、専門的なサポートを提供することが求められています。
薬局の新たな役割
そのため、薬局では対物業務から対人業務への移行が進んでいます。薬の調剤や管理は依然として重要ですが、それ以上に、薬剤師の知識や技術を活かした丁寧な接客やサポートが求められているのです。
とくに、複雑な症状や薬剤の副作用に関する相談に応じることや患者が治療計画を理解し、適切に薬を服用できるようにサポートすることが重要。さらに、薬局は地域の健康増進活動にも積極的に参加し、地域住民の健康に貢献する役割も担っています。
対人業務が重視されるようになった背景
これまで、調剤師の業務は薬剤の管理や精密な調剤が主でした。しかし、近年では技術の進歩により、全自動の調剤分包機などが導入される薬局が増加しています。さらに、AI技術の活用により、在庫管理と同時に調剤や服薬指導が行われるケースも増えています。
このような技術の進歩により、調剤は薬剤師によるものに限定されなくなってきたのです。
薬局業界の変化と求められる役割
その結果、単に薬を調剤するだけの薬局や薬剤師では生き残りにくくなってきました。このような背景から、充実した服薬指導や服薬中のフォローができる薬局や薬剤師が求められるようになったのです。国もこの動向を受けて、薬局に対して対人業務の強化を求めるようになりました。
人間性と専門性の重要性
対物業務は機械やAIに任せることができますが、人とのコミュニケーションや共感、協調のスキルは薬剤師によって圧倒的に備わっています。病気や体調不良の際、AIに心配されるよりも、薬剤師からのアドバイスやアフターフォローを受けることが安心とされているのです。
また、患者の中には薬剤師と直接話をしたいという要望もあります。
対人業務の重視の背景
このように、単なる薬の調剤から患者の服薬に責任をもち、寄り添うコミュニケーションが求められるようになったことが、対人業務の重視が増す主な背景です。
対人業務の体制強化の方法
対物業務から対人業務への転換が求められるようになった以上、対人業務の体制強化には早急な対応が必要です。こちらでは、対人業務の体制強化の具体的な方法をご紹介しましょう。
対物業務の効率化
従来の対物業務を効率化することで、対人業務に集中する時間や人材を確保する必要があります。薬剤管理や調剤に関しては、AI技術の活用や調剤機器の導入を検討しましょう。
薬剤師以外の職員の活用
薬剤師以外ができる業務に関しては、薬剤師以外の職員も積極的に採用し、薬剤師が対人業務に集中できる体制を整えることが重要です。これにより、薬剤師の負担を軽減し、患者へのサービス向上につながります。
お薬手帳の活用
患者一人ひとりにお薬手帳を利用してもらうことを推奨します。お薬手帳があれば、前回の薬の詳細や効果について簡単に確認できるため、患者とのコミュニケーションがスムーズになるのです。また、処方される薬の把握も容易になり、患者側にとっても安心感が高まります。
まとめ
調剤報酬改定は、薬局の経営に大きな影響をおよぼします。この改定により、薬剤師の業務にも大きな変化がもたらされました。急激な業務の転換は容易ではありませんが、AIと薬剤師が連携して業務を効率的に行うことで、今後の業務に取り組みやすくなるかもしれません。
AI技術の発展にも関わらず、薬剤師の存在は不可欠です。そのためには、患者とのコミュニケーションや服薬後のサポートなど、対人業務の重要性を見逃してはならないのです。
将来に向けても、薬剤師の役割を果たし続けるためには、対人業務の効率化とコミュニケーションスキルの向上が欠かせません。患者との信頼関係を築くことこそが、薬局が永続的に成功する秘訣です。
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