服薬フォローアップが義務化された背景とやり方の流れを徹底解説

公開日:2024/02/29
服薬フォローアップが義務化された背景とやり方の流れを徹底解説

2019年12月の改正により、義務付けられた服薬フォローアップ。効果的なフォローアップの実施には、患者さんごとに合わせた適切な対応が必要不可欠です。本記事では、服薬フォローアップが義務化された背景とやり方の流れを詳しく解説します。これから導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

服薬フォローアップの概要と義務化された背景

服薬フォローアップとは、薬剤師が薬を提供する患者さんに対して、服薬期間中に行うフォローのことです。服薬期間中フォローと表現されることもあります。

義務化されるまでは、患者さんが処方箋を受け取りに薬局に来たタイミングのみで指導やヒアリングが行われていました。服薬フォローアップでは薬を受け取り、服薬している期間中にも自宅への訪問や電話、ファックスなどを用いて継続的なヒアリングと指導を行います。

処方箋を提供するすべての患者さんに対して実施する必要はなく、実施は必要性があると判断された患者さんのみが対象です。服薬期間中の患者さんの服薬状況や患者さんの健康状態、生活環境を確認することを目的に実施されます。

具体的な実施内容

服薬フォローアップでは、主に定期的なヒアリングを実施します。しかし、フォローアップの内容は明確に決められておらず、患者さんごとに合わせた柔軟な対応を行うことが正解とされています。

そのため、あくまでもこれまでに実施された内容は参考までにとどめ、必ず患者さんに合わせた対応を個別に検討するようにしてください。患者さんの属性ごとに対応をパターン化して実施することは、フォローアップの最適解とはいえません。

義務化の背景

服薬フォローアップが実施された理由は、国が2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にする目標を掲げていることが背景にあるといわれています。かかりつけ薬局とは、普段から通い慣れた特定の薬局という意味です。

現状多くの人が処方箋を受け取る薬局を1か所に定めていない事態を、かかりつけ薬局を推奨することでひとつに集約することを目的としています。また、フォローアップを義務化することで、薬剤師の業務を調剤から患者対応へ比重を移す狙いがあるのです。

薬剤師の今後

薬剤師はこれまで、調剤などの業務に注力するシーンが多かったですが、国は今後薬剤師に患者対応の方に注力させたいと考えています。服薬フォローアップが努力義務から義務へと変更されたのもその一環です。

薬剤師は今後医療の一端を担う専門家として、調剤よりも患者さんと向き合う時間が増えていくでしょう。

服薬フォローアップの実際の流れ

服薬フォローアップを実施する際は大まかに、検討、初回対応、次回来店時の対応という流れになります。次回対応後以降は繰り返しです。こちらで、服薬フォローアップの流れについて詳しく解説します。

実施すべきか検討する

服薬フォローアップは、処方箋の薬を飲んでいるすべての患者さんに必要な対応ではなく、薬剤師が必要だと判断した場合のみ実施されます。そのため、開始する際は、最初に実施すべきかをケースごとに担当者がじっくりと検討する必要があるのです。

フォローアップを実施するか明確なルールはなく、またやり方もさまざまなため、現場で患者さんと接している薬剤師の判断にゆだねられる部分が大きい点が特徴です。実施すべきか判断しかねる場合は、これまでに実施されたケースを参考にするとよいでしょう。

義務とされているのは対象者への実施であって、すべての患者さんではない点を間違えないようにしてください。

初回来店時の流れ

フォローアップの実施が決定した患者さんが初回来店した際には、まずヒアリングを行います。ヒアリングでは、現在飲んでいる薬の確認や患者さんの健康状況、生活環境などを確認しましょう。

初回来店時は聞き取り確認が中心になります。実施が決定した時点で、週に一度LINEメッセージでしっかりと薬を飲めているかの確認をするなどの明確な方針が確定している場合には、忘れずに伝えるようにしてください。

なお、一定の周期でテンプレートのメッセージを送り続けるフォローの仕方は悪いわけではありませんが、患者さんとの信頼関係を壊しかねないため要注意です。

薬の交付から次回の来店までの流れ

薬の交付から次回来店までの間は、決定した対応の実施および、新たに得られた情報から次回来店時の対応の検討、担当医へのフィードバックなどを行う期間です。

全体の流れはPDCAサイクルを回す要領と同じで、常に改善点を検討し、患者さんに合った適切な対応が行えるまで改善し続ける必要があります。対応を決める際は、ハイリスク薬の有無や同時に複数の薬を服用しているか、疾患の有無、副作用歴の有無、妊娠状況、患者さんの特性などのさまざまな要因に配慮して決定する必要があるのです。

フォローアップの実施は義務付けられていますが、具体的な内容は定められていないため、現場の薬剤師が臨機応変に対応しなくてはなりません。一人ひとりに合わせてしっかりと検討しましょう。

次回来店時の流れ

患者さんが再度来店した際には、初回来店時同様にヒアリングを行います。来店までに実施した対応を振り返り、改善点が合った場合には改善を検討して対応の再計画を実施。

PDCAサイクルと同じで、1回目で完璧の結果を残すのではなく、2回3回と回数を重ねるごとに問題点を見つけ解決していくことが前提とされているため、初回で完璧なフォローが行えなくても問題ありません。

次回来店時以降の流れ

再来店終了後は、再び初回来店後同様にフォローアップの実施と次回来店時の対応の検討、担当医へのフィードバックを実施します。以降はこの一連の流れを繰り返し、患者さんに合わせた最適な対応の実現に近づけていくのです。

患者さんごとにやり方を変え、寄り添うことが大事

患者さんごとにやり方を選び、一人ひとりに寄り添うことは、服薬フォローアップにおいてとても大切です。やり方は正解がひとつとは限らず、患者さんの状況やニーズに応じて対応を変えることが求められます。

過去の実施例や効率化に固執せずに、常に患者さんの特性に合わせた方法でフォローを行うことが重要です。

患者さんのニーズに合わせた柔軟なアプローチ

一部の薬局では、対応に時間をかけないために、特定の薬を処方している患者さんに対して定期的なメッセージを一斉送信するなどのパターン化されたアプローチを取っています。

しかし、このような一律の対応はすべての患者さんに適用できるわけではありません。患者さんのニーズや状況に合わせて柔軟に対応することが不可欠です。

義務化されたからといって適当な対応はNG

義務化されたからといって、適当な対応を行うのは望ましくありません。義務化以前にも、患者さんとの信頼関係を築くには、処方薬を渡したあとも患者さんの状態を確認し、適切なフォローアップを行うことが必要でした。効率化は重要ですが、患者さんのニーズや安全を優先して行動することが重要です。

患者さんに最適なフォローアップ方法を追求する

初めての場合は、やり方がわからず混乱するかもしれませんが、患者さんにあったフォローアップ方法を考えることが重要です。患者さんとの信頼関係を築きながら、よりよい医療サービスを提供するために努めましょう。

まとめ

本記事では、服薬フォローアップが義務化された背景とやり方の流れを紹介しました。フォローアップのやり方にルールや正解はなく、実施する際は患者さんごとに合わせた臨機応変な対応を取ることが求められます。

一度で最適解にたどり着く必要はありませんが、服薬期間中常に改善し続け、患者さんにとって最適な対応に近づけていくことが必要です。服薬フォローアップを実施する際は、過去の実施例や効率化に囚われ過ぎず、患者さんに寄り添った対応が行えるよう努めましょう。

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