リフィル処方箋という言葉になじみがない人もいるでしょう。リフィル処方箋は2022年から導入された便利な薬の受け取り方で、とくに慢性疾患を抱える患者の負担を減らせる仕組みです。今回の記事は、リフィル処方箋の特徴や導入するメリットについて解説します。また、リフィル処方箋の今後の課題についても説明します。
リフィル処方箋とは?
従来の処方箋と異なり、リフィル処方箋は複数回利用できる新しい薬の受け取り方です。ここではリフィル処方箋の仕組みについて具体的に解説しましょう。
繰り返し利用できる処方箋
一般的に患者が薬を受け取りたいときは、病院を受診して処方箋を受けとり、調剤薬局で薬をもらいます。従来の処方箋は医師が診察するたびに発行するので、1回限り使用可能です。
しかし、リフィル処方箋であれば医師が決めた期間内で繰り返し利用できます。リフィル処方箋を利用できるのは症状が安定している患者に限られており、医師と薬剤師の連携の下であることが条件です。
アメリカやヨーロッパなどの外国では、日本よりも早くリフィル処方箋が導入されてきました。リフィルは英語で、詰め替えや補充用の品という意味をもちます。
処方できない薬や回数制限がある
すべての薬がリフィル処方箋の対象ではありません。リフィル処方箋では処方できない薬として、睡眠導入剤などの向精神薬、湿布、がんの痛み止めとしての麻薬などが挙げられます。
また、回数にも制限があります。基本的に3回まで使用できるものの、医師の判断によっては2回までに制限される場合もあります。
リフィル処方箋を導入するメリット
日本でもリフィル処方箋の導入をスタートした医療機関は数多くあります。ここではリフィル処方箋を導入するメリットについて解説します。
患者さんの受診回数を減らせる
リフィル処方箋があれば、患者は薬が必要なときに毎回受診する必要がありません。慢性的な疾患を抱えている患者にとっては、とても便利な仕組みといえます。
処方箋をもらうための受診回数が減らせるので、患者が負担する受診費用や通院にかかる交通費や手間を減らせるでしょう。また医療費の削減にもつながります。
かかりつけ薬局として信頼関係ができる
リフィル処方箋で2・3回目の薬を受け取るときは、患者は薬局へ直接出向くことになります。前回処方したときからの体調変化などを薬剤師が確認するので、密に患者とコミュニケーションすることになります。
薬剤師と患者の関係が密接になり、かかりつけ薬局として定期的に通ってくれる可能性が高まります。患者が同じ調剤薬局で薬を受けとることで、薬剤師も円滑に薬剤管理指導できるでしょう。
リフィル処方箋の今後の課題
リフィル処方箋にはメリットが多いものの、いくつか課題があります。ここではリフィル処方箋の今後の課題について説明しましょう。
患者さんが処方箋を紛失する可能性がある
リフィル処方箋は3回目の薬を受け取るまで、患者自身で原本を保管しなければなりません。リフィル処方箋がなくなったら薬を受け取れないため、管理には注意が必要です。
また、予備のつもりでリフィル処方箋をコピーしても、調剤薬局では受け付けてもらえません。自宅のどこにレフィル処方箋を保管したか、患者自身がしっかり覚えておく必要があります。
薬剤師の負担が増える
リフィル処方箋を利用すると患者は病院に行かずに調剤薬局に直接行くため、受診回数が減ります。通常は医師と連携していた服薬管理や健康状態の把握などを、基本的には薬剤師だけで対応することになります。
また、薬剤師が患者の状態などから調剤することが不適切と判断した場合は、患者に受診を勧め、処方した医師に情報提供する必要もあります。このように、リフィル処方箋によって薬剤師への負担が増える可能性があります。
患者が受診に消極的になる
医師は診察によって患者の病状などを把握します。しかし、リフィル処方箋によって受診頻度が減ると、病状に変化があったときに適切な処置が遅れてしまう懸念があります。
また、便利なリフィル処方箋に慣れてしまうと、患者が病院に出かけことを面倒に感じる可能性もあります。薬剤師と患者が薬や体調についてよく相談でき、必要に応じて薬剤師と医師が連携することが大切でしょう。
対応していない医療機関もある
日本でリフィル処方箋の制度は2022年にスタートしたものの、まだ広く普及されているわけではありません。そのため、医療機関によってはリフィル処方箋に対応していない場合も多いのが現状です。
まとめ
今回の記事で紹介したように、リフィル処方箋は持病がある患者さんには通院の負担が減るなどのメリットがあります。その一方で、患者さんがリフィル処方箋をもっていても、症状が変わった場合などは必要に応じて受診する必要があります。
薬剤師の負担や責任が増えるなど、懸念すべき点があることも事実です。ただし、今後リフィル処方箋が広く普及すれば、患者さんと薬剤師が密にコミュニケーションして信頼関係を築けることも期待できるでしょう。メリットとデメリットを考えながら導入するか検討してください。
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