2016年に診療報酬改定によって分割調剤が導入されました。分割調剤は長期的に薬剤を処方する場合に、適切な保管と使用を管理するための制度です。本記事では分割調剤とはどのようなものか解説するとともに、導入の目的とメリット・デメリットについて解説します。分割調剤を導入するか検討している薬剤師の方は、ぜひ最後までご覧ください。
分割調剤を導入する目的
ここでは分割調剤を導入する目的と混合されやすいリフィル処方との違いについて解説します。まずは分割調剤を導入した理由についてです。
導入理由:薬の管理をしやすくするため
薬の種類によっては、患者の状態を把握しながら定期的に服用する薬を処方するほうが良い場合があります。また吸入薬や投薬するための機器が必要な場合には、きちんとした方法で使用し、効果が出ているか確認するケースもあるでしょう。
医師が分割調剤の指示を出して入れば、その指示に基づいて薬剤師が薬の管理・指導が行えるため、医薬品の無駄遣いや過度な処方が少なくなります。
導入理由:ポリファーマシーを予防するため
分割調剤にはポリファーマシーを予防する効果もあります。「ポリファーマシー」とは、必要量以上、または不必要な薬が処方されていることです。処方薬が増えると飲み合わせによる副作用や薬の飲み忘れ・飲み間違いが起こりやすくなります。
分割調剤をすれば、薬剤師による服薬指導の機会が増えるため、飲み忘れや飲み間違いを防ぐことができるでしょう。また、「はじめの期間は○○の薬と○○の薬だけ、次の月は〇と〇の薬を処方する」などといった、分割して処方されるため、患者側も飲む薬を判断しやすいという利点もあります。
導入理由:残薬と医療費を削減するため
分割調剤には薬を管理しやすくなるという薬剤師側のメリットや、ポリファーマシーを予防する患者側のメリットのほかに、残薬を減らすという利点もあります。
年々国民医療費が増えており、なかでも服用されないまま家に眠っている残薬が増加しているという問題があります。日本薬剤師会の推察では、75歳以上の在宅患者だけでも年間475億円相当の残薬があるといわれており、すぐに解決しなければならないでしょう。
そのために分割調剤が導入され、適切な期間に適切な量の薬が処方できるようになりました。
分割調剤とリフィル処方の違い
2022年には公的医療保険制度にて、分割調剤に加えて「リフィル処方箋」という制度が導入されました。
リフィル処方箋とは、症状が安定している患者に対して、医師が長期処方が可能と診断した際に、同じ薬を最大3回まで繰り返してもらうことができる処方箋です。リフィル処方箋を使用すると薬を受け取る際の通院は不必要になり、医師・患者ともに時間や費用が軽減できます。
まとめると分割調剤は、90日分の処方箋を薬剤師が3回に分割して処方する方法、リフィル処方箋は、30日分の処方箋を指定した回数(最大3回)繰り返し患者が利用できる方法と捉えると良いでしょう。
分割調剤のメリット
ここからは分割調剤のメリットについてお伝えします。
患者がフィードバックできる
分割調剤のメリットは、複数回に分けて薬が処方されるため、薬を飲んでみてどのような変化があったかを薬剤師を通じて医師に伝えやすいことです。
現在は服薬アドヒアランスとして、患者が治療方針の決定に参加する姿勢が求められるようになっています。そのため、自分の意見を伝えやすい分割調剤は時代の流れに合っているのです。
薬の管理がしやすい
長期間飲んでいる薬でも、体調の変化や心の変化とともに症状に合わなくなるケースがあります。また別の病気にかかることで、今まで飲んでいた薬が飲めなくなることもあるでしょう。
ただ分割調剤であれば、適宜薬を変更することができ、臨機応変に対応することができます。薬を受け取りに行くごとに薬剤師とコミュニケーションが取れるため、その人のそのタイミングに応じた服薬管理ができるでしょう。
副作用に気付きやすい
患者からのフィードバックを得やすいことや、薬剤師が薬の管理がしやすいことは、薬の副作用の発見につながります。新薬を服用する場合や、飲み合わせに事例があまりない状況でも、分割調剤であれば詳細な対応ができるため、副作用の発見に気付きやすいでしょう。
分割調剤のデメリット
ここまでは分割調剤のメリットをお伝えしました。ここからは分割調剤のデメリットについて解説します。
業務が増える
分割調剤は調剤のたびに患者が来店し、カウンセリングや患者からのフィードバックを医者に仲介する必要があります。また患者が来店しないときには連絡をしたり、他局を希望された時には、変更手続きを行ったりと業務が増えるのが特徴です。
それにもかかわらず分割調剤は調剤報酬が高くないため、業務量に対してのリターンが見合っていないのはデメリットになってしまいます。
調剤日数の計算がやや面倒
分割調剤を行う際には以下の2点に気を付ける必要があります。厚生労働省「調剤報酬点数表に関する事項」によると、次のように取り決められています。
・処方箋に記載された容量を超えてはならない
・2回以降の調剤において「(処方箋の使用期間(4日)+用量(日分)の日数)-(2回目の調剤日-1回目の調剤日+1)」から算出される数字を超えては交付できない(※処方箋の使用期間は基本的に4日。また一回目の調剤日をカウントして計算するため計算式に+1が入っている。)
調剤報酬点数表の具体例
例を挙げて説明します。たとえば、4月3日に交付された処方箋によって用量10日分の薬が処方されたとして、4月4日に5日分の分割調剤をしたとします。このとき、2回目の来店が4月10日として先ほどの計算式を利用すると、「(4日+10日) – (4月10日-4月4日+1)=7日」となり、残りの薬(5日分)よりも多いため、全て薬を交付できます。
しかし、患者の2回目の来店が4月13日になったとすると「14日-(4月13日-4月4日+1)=4日)」となり、残りの薬(5日分)より少ないですが、計算結果を超えた量は交付できないため、4日分交付することになります。
このように分割調剤はやや面倒なので、ポイントを抑えて対応することが必要になります。
分割調剤を導入する際に気をつけること
分割調剤は患者の意見が聞けたり、そのときの患者に合った薬を処方できたりするのが利点です。せっかく医師が分割調剤を指示しても、ただその通りに処方していては意味がありません。その意図を汲み取り、服薬管理を行ってこそ、分割調剤の利点が大きくなるのです。
また分割調剤は基本的に長期的な服薬が前提です。長期的にお付き合いする患者様ですから、2回目、3回目でも気軽に相談できるような処方を心がけ、適切な服薬指導を行う姿勢が大切です。
まとめ
本記事では、分割調剤導入の目的と、メリット・デメリット、分割調剤を導入する際に気を付けることの4点を解説しました。分割調剤は、薬剤師にとって仕事が増える業務ではあるものの、お客様の服薬を長期的に管理し、サポートする重要な業務です。
分割調剤の処方の仕方をきっちりと抑えつつ、患者様に適切なアドバイスを行い、治療をスムーズに進めることが、ポリファーマシーを予防し残薬や医療費削減につながります。
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