薬局で薬を受け取るとき、薬剤師がいくつかの確認作業を行っていることをご存じでしょうか。「監査」や「鑑査」という言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれません。どちらも「かんさ」と読み、調剤の現場でよく使われる言葉ですが、意味や使い方が少し異なります。この記事では、2つの言葉の違いと、使い分けについて解説します。
「監査」と「鑑査」はなにが違うのか
「監査」と「鑑査」は同じ読み方をしますが、使われている漢字の意味が違います。調剤の現場でどちらの表記が使われているかは、薬局や病院によってさまざまです。まずは、言葉そのものの意味から確認してみましょう。
漢字が表す意味の差
「監査」の「監」は、監督や監視という言葉でも使われる字で「見張る」「取り締まる」「調べて見る」という意味をもちます。一方「鑑査」の「鑑」は、鑑定や鑑識という言葉で使われる字で「じっくりと観察して内容を見極める」という意味をもちます。
どちらも確認する行為を指しますが、ニュアンスが少し異なります。調剤の現場では、文献によって「処方せん監査」と書かれることも「処方せん鑑査」と書かれることもあり、どちらか一方が正式というわけではありません。
法律上の規定ではどう書かれているか
薬剤師の業務は薬剤師法によって定められており、第23条では「処方せんによる調剤」が、第24条では「処方せん中に疑わしい点があるときは確認してから調剤しなければならない」ことが義務付けられています。ただし、条文のなかに「監査」や「鑑査」という言葉は出てきません。実際には各薬局や病院が独自に表記を統一しているケースが多く、どちらの漢字が正しいかは一概にはいえないのが現状です。
処方監査と調剤鑑査はなにが違うのか
「監査・鑑査」という言葉の違いと同時に「処方監査」と「調剤鑑査」という2つの業務の違いも理解しておくことが大切です。この2つは行うタイミングと確認する対象がはっきりと異なります。
処方監査とはなにを確認する作業か
処方監査は、薬を調剤する前に処方せんを確認する作業です。大きく2つのステップで行われます。1つ目は「形式的監査」と呼ばれる、患者の氏名・生年月日・医師名・薬の名前・用法・用量などの記載に漏れや誤りがないかを確認する作業です。
2つ目は「薬学的監査」と呼ばれ、処方された薬が患者に適切かどうかを確認します。具体的には、禁忌薬の有無、重複して同じ薬が処方されていないか、ほかに飲んでいる薬との飲み合わせに問題はないか、用量は患者の腎機能や年齢に合っているかといった点を専門的な知識で確認します。疑問点があれば、医師に問い合わせる疑義照会を行います。
調剤鑑査とは何を確認する作業か
調剤鑑査は、薬の調剤が終わった後に行う確認作業です。処方せんのとおりに正しく薬が取りそろえられているか、薬の種類や数量は合っているか、袋に書かれた内容は処方せんと一致しているか、患者に渡す際の添付文書は揃っているかなどを確認します。調製を行った薬剤師とは別の薬剤師が確認するのが原則で、いわゆるダブルチェックの役割を果たします。
2つの業務の流れと位置づけ
調剤の流れを大まかに示すと、処方せん受付→処方監査→薬の取りそろえ・調製→調剤鑑査→服薬指導・投薬という順番になります。処方監査は調剤の入口、調剤鑑査は調剤の出口にあたる作業です。どちらも省略できない重要な工程で、それぞれが異なるタイミングで患者の安全を守る役割を担っています。
なぜこの2つの確認が必要なのか
処方監査と調剤鑑査がなぜ別々に設けられているのか、疑問に思う人もいるかもしれません。それぞれが防ぐリスクの種類が異なるため、両方の確認が必要とされています。
調剤過誤を防ぐための仕組みとして
薬の調剤ミスは、患者の健康に直接影響を与えます。処方監査では処方内容そのものの誤りを防ぎ、調剤鑑査では調製後のピッキングミスや数量の間違いを防ぎます。近年は自動分包機や調剤鑑査システムの導入が進んでいますが、機械の不具合が発生することもあるため、薬剤師による最終確認は引き続き欠かせません。2段階の確認体制が、ミスを防ぐためのセーフティネットとして機能しています。
薬剤師の責務として法律が定めていること
薬剤師法第24条は「処方せんに疑わしい点があるときは医師に確認してから調剤しなければならない」と定めています。この規定は、薬剤師が処方せんをただ受け取って作業するだけの存在ではなく、専門家として処方内容の適切さを判断する責任を負っていることを示しています。処方監査はこの法律上の義務を果たすための行為であり、調剤鑑査とあわせて患者に安全な薬を届けるための仕組みを構成しています。
まとめ
「監査」と「鑑査」はどちらも「かんさ」と読む言葉で、漢字の意味には若干の違いがあるものの、調剤の現場ではどちらの表記も使われており、法律上どちらが正式かという規定はありません。業務としての「処方監査」は調剤前に処方せんの内容が正しいかを確認する作業で「調剤鑑査」は調剤後に薬が正しく取りそろえられているかを確認する作業です。この2つは確認するタイミングと対象がまったく異なり、それぞれが調剤過誤を防ぐための重要な役割を担っています。薬剤師は法律上の義務として処方内容を確認し、専門的な知識をもとに患者の安全を守っています。薬局を利用する際、このような確認作業が行われていることを知っておくと、薬剤師の仕事への理解がより深まるでしょう。
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